最高裁判所第二小法廷 昭和35年(オ)197号 判決 1963年3月08日
主文
原判決を破棄する。
本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
理由
上告代理人間狩宥遵、同間狩昭の上告理由一について。
控訴代理人は、原審において、かりに訴外富山富太郎が被控訴人(被上告人)の代理人もしくは使者として控訴人(上告人)より本件貸金六八万円を受領する権限がなく、従つて、控訴人の本件貸金請求が認容されないとしても、被控訴人は訴外富山より控訴人が富山に交付した前記六八万円を受領し、法律上の原因なくして控訴人の損失において右金額の利得を得たものであるから、右金額の返還を求める旨主張したことは、原審第一回口頭弁論調書により明らかである。しかるに、原判決は、控訴人の右予備的請求の当否に関し判断を示さず、単に控訴人の本件貸金請求のみについて判断しこれを理由がないとして排斥したものであることは判文上明白である。右のような関係にある訴が予備的に併合された場合には、主たる請求を排斥する裁判をするときは、同時に予備的請求についても裁判することを要し、これを各別に判決することは許されないものと解すべきである。原判決は、控訴人の主たる請求についてこれを排斥する裁判をしながら、予備的請求についての裁判をしなかつたこと前示のとおりであるから違法であり、この点において破棄差戻しを免れない。
よつて、その余の上告理由についての判断を省略し、民訴四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助 裁判官 草鹿浅之介)